2007年10月09日

【IF Another despair】邂逅

とうとうIFでお話リンクだよ。
今さらだけど…他人様のPCさんを預かるのって大変だね、やっぱ。

※注 アンオフィSS第4段です。ご注意ください。




これはひっそりと繋がる物語
これは噂で広まっていく伝承
これは続きを結んでゆく奇譚

公然と繋がり広まる物語があるとしたならばという仮定の上においてなら
それは複線のようで伏線のようないつかは
繋がるかもしれない逸話

それでも知る勇気があるのかな?


――ならば騙らずにありのままを語ろうか――


【20XX年 封鎖特区横浜 エリア・トツカ】

「乞食の拠点」などと揶揄される、とある傭兵部隊の拠点がある。
日も暮れた頃、その拠点の中のある広場から今一台のヘリが飛び立とうとしていた。

「じゃあゲンさん、悪いけど今夜はよろしく頼むよ!」
「若旦那の頼みでさぁ。しっかと任されやしたよ!」
「兄さん、早く。さつきが待ってますわ」

周囲のものの態度からするにこの傭兵部隊を取り仕切るような地位に居るのであろう男が、ヘリの中の女性に急かされるようにして自らも乗り込んでいく。

男の名は天野夏優。ここ数年で台頭してきた兵器産業メーカーACが所有する傭兵部隊【黄昏】の隊長であり、かつて鎌倉にあったという能力者を多く在籍させた「学園」卒の能力者。
隣に座る女は海女野冬美。姓こそ違うものの夏優の妹であり、彼女もまた「学園」卒の能力者なのだが今は家業であった会社を建て直した敏腕経営者―ワンマンとも言うが―ACの会長である。
末妹のさつきは会長である冬美の秘書をしているのだが、今日の特区内視察には同行していない。

「…兄さん」
「ん?なんだ、冬美」

そうポツリと呟く冬美の方へ夏優が視線を向けると、彼女は満面の笑みで夏優を見つめていた。

「久々に2人っきりになれましたわね。うふふ♪」
「へ?や、ちょっと待て冬美!お前操縦士居るの忘れてるだろっ?!」
そう言って隣に座る冬美が腕を絡めてくるのを、慌てて身をよじって必死に逃れようとする夏優。しかし狭い機内で逃れる場所など在る筈も無く、ガッチリと腕を取られてぴったりと隣に張り付かれてしまう。
「置物だと思えばいいんですわ。夜のエアクルーズデート、楽しみにしてたんですもの♪」

………なかよきことはうつくしきかな。ですが、お願いですからヘリ機内で暴れないで下さい…。
仕事に忠実だった操縦士の男がそんな事を思ったとか思わないとか。

「ちょ、待てって、アレ妙じゃないか?」
「んもう、そんな事言って逃げようとしても無駄ですわよ?」
「嘘じゃないさ。ほら、あの明かり…見てみろよ」

真面目な兄の表情にしぶしぶ冬美も眼下の景色に目をやる。


黄昏が物資配給をしていたり、一般人を保護してくれる宗教団体等があるとは言え、特区内で出回る物資や食料の絶対量はやはり少ない。そのため特区内では生き延びる為に盗みや略奪などが横行している。
人々は自分の身を守るために、夜には特に在所を悟られぬよう極力明かりを落として生活するのが暗黙の了解となっている。わざわざ明かりをつけるのは襲われる事がないか襲われても返り討ちにできる組織、あるいはそれに属する者たちか、そうする事で己の力を誇示しようとするならず者どもくらいだろう。
だから今2人が上空から見下ろす街並みは、まるで灯火管制下のあった戦時中のようにひっそりとしている――はずだった。

「確かに妙ですわね。――緒方、現在の場所は?」
「エリア・セントラル南東上空。あの明かりは旧本牧地区付近と思われます」
旧本牧地区。港湾地区特有の、運搬船用のターミナルとコンテナ倉庫や工場の立ち並ぶ工業地区だ。
そんな場所に何故明かりが?このあたりに特に大きな勢力が拠点を持っているという偵察報告はなかったはずなのだが。

「もう少し高度下げてみてくれ。少し様子を見てみたい」
「了解。念のため海側に出ますのでしばしお待ちを」
「いえ、降りれないかしら?明かり自体は小さいですわ。大人数の組織ではないはずです」
その言葉に反応して夏優があわてて冬美を見る。その目は確信に満ちたAC会長の目だった。





【エリア・セントラル】

「やっぱり軽量化との兼ね合いがまだ厳しいね」

高い位置にある割れた窓ガラスやコンクリートの壁に走る大きな亀裂の隙間から明かりとかすかな人の声が漏れてくる。元々は大きな工場であったこの建物は倒壊こそしていないものの、壁には亀裂だけでなくコンクリートが剥がれ落ちて鉄筋が露出している部分さえある。そして外からでは確認し難いのだが、この建物は屋根に1/3近くもの大穴が開いてしまっている。

「うーん、それでも以前のデータでならこれで87%は防げるはずなんだけれどね…」

そんな事を気にも留めていないのか、廃墟と化したその工場跡の中には金属片を手に書類の束を見比べている男がいた。
仕立ての良さを感じさせるスーツの上に白衣を着たメガネの男は、政府の研究機関から離反・脱走してきてこの特区内の廃工場に身を隠しているのだが……どうにも隠れている自覚が足りないのだろうか。屋根の穴から丸見えになる様なところに居を構えるわ堂々と明かりを点けて存在を示すわで…彼の事情を知る者が居れば呆れ果てたことだろう。

いや、彼の事情など知らなくても呆れ果てている者達が居た。
「全く…何ですの、あの男は。よく今まで襲われずに生き残れたものですわ」

だが呆れられた当の本人は壁の向こう側から亀裂の隙間を使って覗き込んでいる存在になど気付くはずもなく。埃だらけの作業台に広げ散らかされた紙の束に走り書きのメモを書き付けたり赤ペンで印を付けたり、かと思えば旧式過ぎるノートパソコンのよう大きくて重そうな端末を開いて画面に魅入ってみたり、忙しなく何かデータを打ち込んでみたり。

――が、男はふと顔を上げて振り返ると、虚空に向かって話し掛けた。

「そこ、誰か居るの?」
もちろん誰も居ない――少なくとも彼の目には人の姿は映っていないのだが。

「そう言えば、能力者の中には透明人間になれるタイプが居たんだったね。もう政府からお迎え…いやきっと僕の事は許さないだろうから連れ戻す事は無いのかな?まぁ追っ手が来たのかと思ったけれど、能力者だって言うのなら違いそうだね。第一諜報部には能力者の部員は居なかったはずだし。」

ココに彼以外の一般人が居たならば、うっすらと笑みさえ浮かべながら誰も居ない空間に向かって語りかけ続ける異様な姿に、精神に異常をきたして何かを踏み越えてしまったアブナイ男の戯言と思った事だろう。そして次の瞬間に起こったことに我が目を疑い、信じられない、理解出来ないと歌い…もとい、叫び散らしたくなったであろう。

その次の瞬間に起きたことというのは、彼が見つめていた誰も居なかったはずのその場所に、1人の男が何の前触れもなく姿を現したのだ。

「その口ぶりだと能力者じゃないみたいだが、どうしてわかった?」
「あれ、本当に誰かいたんだね。空気が動いた気がしたから言ってみただけなんだけれど」
「空気が動いた?」

闇纏いを解除して姿を現した男は、自分の存在に気付いた目の前に居る白衣の男に問いただす。

「うん。今君が居る方からね、埃が、飛んできたんだ。ここ、かなり積もっているからね。」
そう言って白衣の男は靴のつま先でトントンと床を蹴る仕草をする。それにあわせて床に積もった埃の塊が浮き上がり、ふわりふわりと床を滑っていく。

「…迂闊だったな。だが、何故この能力の事を知っている?政府がどうとか言っていたが」
「あぁ。僕はね、政府を裏切って脱走してきたんだ。」
「脱走?」
「うん。僕はね、弟を殺してしまった政府が、いや…自分が許せないんだ。」

――実は、僕はついこの間まで「能力者管理研究所」っていう横須賀にある政府の研究機関で対能力者装備の開発をしていたんだ。自分の発想が、研究が、成果を上げて形になっていくのが堪らなく楽しくて嬉しくて。データ収集とか試作品のテストと言う名目で能力者相手に実験をしたりしてた。気が付いたら政府が捕らえてきた能力者達の事なんて、ただの使い捨ての実験材料としか見れなくなっていたんだ。エスカレートした人体実験は彼らの人権なんてあったものじゃなかったし、言い表せないようなひどい事もたくさんしたけれど、その分研究は飛躍的に進んだよ。そして僕の開発した対能力者装備は政府の一般兵たちが装備して特区内へ赴き、その実戦データから研究をするのが面白くてまた更に実験を重ねる…そんな連鎖の毎日だった――

「だけど、その実戦データとして上がってきた報告書に、弟を見つけてしまったんだ。」

――凍り付いちゃったね、あの時は。特区内に居る能力者の事は「立て篭もって政府に反抗しているテロリスト」だって言われていたから…まさか自分の弟が居るなんて思いもしなかったんだよ。
そのとき初めて気が付いたんだ。僕が今まで研究していたのは、テロ対策なんかじゃなく、ただの人殺しの手伝いなんじゃないか。いや僕自身がたくさんの人を殺してきたんだって。
そしてそれを何とも思っていない政府。きっとヤツらは僕の弟が能力者だったと知ったら僕のことをこのまま研究所内に置いておくはずはないだろうって考えて、逃げなくちゃって考えたんだ。
幸いな事に、まだ光也の身元は判明していなかったから…僕は研究所を脱出するついでに研究データや試作品、機材、持ち出せるだけ全てを運んで、データも可能な限り消去した上でここへ逃れてきたんだ。まぁささやかで消極的だけれど、政府への反抗って処かな――

「光也…?もしかして、紅づ…」
「兄さん?その人、誰なんですの?」

冷ややかに自嘲の笑みを浮かべながら話す彼の語りに静かに耳を傾けていたのだが、ふと何か思い出したように男が言葉を挟むと同時に、その後ろから長い髪の女性が現れて声をかけた。

「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕は紅月・星夜。能力者管理研究所における対能力者装備開発部署、特別企画室の元・室長。そして弟の名前は紅月・光也。君達は能力者だよね?この名前に聞き覚えとか無いかな?」
「という事は、私達が知っているあの紅月さんのお兄さまという事かしら?」
「なーんか誰かに似てる様な気がしてたが、どうやらそういう事みたいだな」

白衣の男の名乗りに顔を見合わせる男と女。2人ともどこか思い当たるところがあるようだ。

「知っているのかい?」
「俺は天野夏優、紅月…弟さんと同じ銀誓館卒業生で在学中は同じ寮にいました」
「そうか、寮に入ってた時の光也の友達なんだね。」
「ところで、政府から離反したそうですけれど、これからどうなさるおつもりですの?」
「……僕にはこれしかないからね。できる事なら研究は続けたいけれど、もう何も知らないまま能力者を狩るような勢力には荷担したくないんだ。むしろこの特区に逃げ込んだのは逆にこの特区内の能力者達に何らかの形で手助けが出来ないかと思って…ね」

かつての友人の死を知り少なからずショックを受けたようで俯いて唇を噛む夏優を尻目に女は問いを向ける。困ったように笑う白衣の男。

「それなら、私のところへ来るといいわ。私はAC、アマノカンパニーの会長をしている海女野・冬美と申します。ACでは【黄昏】という傭兵部隊を擁しているんですけれど、貴方の開発したという対能力者装備があれば【黄昏】は今以上に躍進するはずですわ。そしてもちろんACとしても。」
「へぇ。でも傭兵部隊って事は結局戦うんだよね?君達の敵は誰だい?」

「勘違いしないで欲しい。俺たち黄昏が武装するのはもっぱら自衛と一般人を守るためだ」
「えぇ、【黄昏】は今は特区横浜内にて人々の食事や雇用を含む生活支援を行っています。特区内ではシルバーレインの影響でゴーストが頻繁に出没しますからその掃討と、住民同士による略奪の鎮圧及び防止などの治安維持など、武装が必要な場面というのはこの特区内ではいくらでもあるんです。傭兵部隊とは言っても政府軍みたいに無闇に戦う為に武装するわけじゃないんですわ。」

「なるほどね」
星夜は夏優と冬美の話を聞いている間は何やら思案顔であったが、ふと天井――いや、そこに開いた大穴から夜空を見上げてポツリと言葉をこぼした。

「きっと光也が結んでくれた縁だね。もし手の込んだ罠だったとしたら、それは光也の事をちゃんと知ろうとしていなかった僕の報いだと思うことにするよ。」
「という事は了承していただけると言う事かしら?」
「あぁ、これからよろしくね。」

こうして、ようやく笑みを見せた冬美を含めた3人は互いに握手を交わしたのだった。


posted by 紅月 光也 at 17:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 【IF】〜嘆きと悲劇の物語〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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