2007年09月06日

【IF Another despair】『実験室の狂気(マッドドクター)』

このSSは用法要領を守って正しくお使いください。(ぉぃ/笑


※注 アンオフィ未来設定SS第2段です。
   前回以上の鬱展開&アンオフィ増量の為苦手な方はご遠慮ください。



公式な記録には残っていないのだが、一人の男が居た。
只の噂だとしても、唯の都市伝説だとしても。
其処には確かに存在していたのだろう。


さぁ、嘆きと悲劇の詰まった絶望の物語をはじめようか。






これは記録に残されていない物語
これは聞き届けた者の居ない伝承
これは想像と創造でしかない奇譚

記録に残された物語があるとしたならばという仮定の上にあってさえ
それは行間であり幕間であるであろう知られざる逸話

それでも知る勇気があるのかな?


――ならば聞け、"我が弟の友(ノウリョクシャ)"よ――




それは幾度目であろうか。
どこからか集められてくるにわか兵士達が特区と呼ばれる"災害防止柵壁"(バリケード)の顎に飲まれ続け、その度にこの管理計画研究所内では新たな対策と称してさらなる対能力者装備の研究が行われていた。


「その程度なのかい?使えない子は必要ないよ。」
「…う、うぅ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」

『実験室』では今日もデータ収集と称して能力者の研究が進められている。
強化ガラス越しに白衣の男が眺める広い室内に、1人の少年が繋がれて――いや、よく見れば繋がれている訳ではなく、満身創痍で倒れているその全身に取り付けられた特殊な電極やセンサの類のコードが長く伸びているだけのようだ。

「おや、いまの反応はいいね。もう一度見せてごらん?」
「……なっ……も、う…無理…10分、いや5分で…ヒッ――」

冷酷で非情な声を垂れ流す天井のスピーカーなどとうに壊したのだが、どうやらこの声は頭に取り付けられた装置で直接頭蓋に届けられているらしい。
そして、限界を感じて休息を請うごとに全身のいたるところの電極から時に癒しの、時に痺れるほどの衝撃を与えてきて、休む事は許してもらえない。そして今も全身の電極から筋肉に直接電気信号を与え活性化させようとしてきたのだ。

――そのチカラで、もっと強くなりたくはないか?――
そんな一言にまんまと嵌められてこんなところへ転がり込んでしまった過去の自分を恨んでももう遅い。
自分には目覚めた「能力」があるのだからこんな邪魔なものはさっさと外して、こんな一般人(ザコ)どもはいつだって一蹴して帰れる。そんな考えなど『研究』が始まってものの5分で打ち砕かれた。
どれか一つを外そうとすればその予備動作だけで別の電極が強烈な刺激を与えてくるし、その隙をついて擬似戦闘の仮想敵が現れて更なる攻撃を仕掛けてくる。いまだ能力の制御に集中を要する少年には、身を守ろうとすることで精一杯だった。
そして、その為には言われた通りの事をこなしていくしかなかったのだが。幾度も限界を超えて立ち上がりつづけた少年でも、とうとう膝を突いた状態からそれ以上立ち上がる事ができなくなってしまった。
そして暫くの沈黙の後ゆっくりとその姿が傾いてゆき、バタリと床に倒れ伏した。


「はぁ、この子もここまでか。」
「室長、今回の実験はどう――」
「やはり新世代ではダメだね。でもまぁ面白いデータが取れたよ。後はよろしくね?」
「「あ、室ちょ――」」

部下の言葉を遮るように言い放ち、室長と呼ばれた男はゆったりとした動作で白衣を翻した。その背中は追い縋ろうとする言葉すらも拒絶して、隣室でありいまや彼専用となっている特別企画開発室第一ラボへと消えていった。


「……いっつもこれだよ。」
「頭はキレるんだけどなー」
「やっぱ『実験室の狂気(マッドドクター)』ッスよねぇ。」
「”二つ名(ネームド)”クラスと同じくらい「アブナイ」んじゃないか?」
「ははは!そいつぁいいや。」
「ちょっと、声!声デカイッスよ!」
「なぁに、ココは完全防音だから大丈夫だっつーの」
「そろそろ口だけじゃなく手も動かしてもらえるか?」
「へいへい」「はいっ!」


それは幾度となく繰り返される日常。
異常である事に慣れきってしまった実状。

これは明日もそのまた明日も更にそのまた明日も、続くのであろう。


――研究所にとっての『異常』が起きない限りは――
posted by 紅月 光也 at 02:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 【IF】〜嘆きと悲劇の物語〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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