2007年02月22日

蜘蛛依頼についてのトンデモ論

その日、俺は大食堂の片隅で珈琲を片手に考え事をしていた。

「姫様に母上様、それに女王か…一体何なんだろうな…」

完成したばかりの報告書の中からあの蜘蛛の妖獣に関するものだけをプリントし
それを眺めながら、蜘蛛から変化した怪しげな男のことを考えていたのだ。

「あれ、光也君。どうしたの?」

そこに現れたのはフレア・タカツキだった。
レイヤも含めた幼馴染だったんだけれど、中学の頃の俺は塾通いの毎日で会う事もほとんどなくなっていたから、銀誓館へ来て何年かぶりに再会したのだ。

「あぁ、ちょっと依頼の報告書を読んでてね…。聞いただろ?蜘蛛男の話」
「えぇ…蜘蛛の妖獣を助けようとしてたみたいですね。…何なのでしょうか。」
「そうだね。こいつらが何者なのかは…今は想像するしかないけどな。」

少し気になることだし、ブレスト代わりに色々話してみるかな…。




フレアも奥のキッチンで自分で紅茶を入れてきて、光也の向かいの席に座ったが、
その手にもやはり、光也と同じようにプリントアウトされた依頼の報告書が握られていた。

「あぁ、ここだと寒くないか?良ければ俺の部屋ででも…」
「あ、えっと。私なら大丈夫ですから。それに…彼女さんに悪いですし。」

そう言われてはたと気付く。そんなつもりは毛頭無かったし、昔は良く遊んだ仲だったから普通に友人を部屋に上げる感覚で誘ってしまっただけだ。が、いくら本人にそのつもりが無くても。
――もしフレアを部屋に上げるところを誰かに見られたとしたら――
いらぬ誤解は避けた方が無難だろう。フレアの気遣いに素直に感謝するとしようか。

「それもそうだな。でさ、フレアはこの蜘蛛、どう思う?」
「そうですね…蜘蛛が人に化けたのか、もしくは人が蜘蛛の姿をとっていたのか…」
「なるほど、人が蜘蛛の姿、か。そういう考え方もあるな。」
「えぇ。武士の一族の残留思念が蜘蛛の妖獣として力を蓄えて人型に…とか。」

やはり一人で考えていては思いつかないこともある。
そうやって思いつくままに意見を交換しているうちに、俺はある事に思い至った。

「ものすごいトンデモ論を思いついたんだけど、聞いてくれるか?」
「…トンデモ論って、何ですか?」

ティーカップを両手で抱えてきょとんとした顔をしてフレアが尋ねてくる。

「依頼の報告書に目を通した後、図書館にも寄ったんだけどな…」

世界結界が出来たのは、いつ頃か覚えてるか?実は13世紀らしいんだ。
ここに俺の日本史の教科書があるんだが…13世紀の日本といえば、これだよ。

 ―――― 鎌倉時代 ――――

そして1996年、銀誓館学園を開校するに当たって何故鎌倉の地が選ばれたのかというと『シルバーレインの影響が最も少なかった』から、らしいんだ。

「この符号、妙に気にならないか?」
「ま、まさか…光也君、鎌倉幕府が世界結界を作ったって言うの?!」
「だからトンデモ論だと言っただろう?」

いくら前置きがあっても。ここまで突拍子も無いことを言われれば驚かないはずがない。

「あ、でも…幕府自体が成立したのは12世紀です。」
「それは反対勢力である奥州藤原氏討伐に時間がかかったからだろうね」
「そうなると…その奥州に逃げ込んだ義経は能力者だったりして!」
「ありえない話じゃないね」

いや、ありえないだろう。とツッコミを入れる者はその場には誰も居なかった。
既にフレアもスケールの大きすぎる仮説に飲まれてノリノリだ。

「じゃあ後鳥羽上皇の承久の乱とかも…」
「あぁ、詠唱銀放逐に納得しない朝廷と幕府による争いだった」
「じゃあじゃあ、北条氏による執権政治っていうのは…」
「北条氏こそが世界結界を構築した立役者だった、というのはどうだろうか?」

どうだろうか、じゃないよ。そんなでかい事をぶち上げるならもっと練ってからになさい。
という背後の声など届くわけもなく…2人は楽しそうにトンデモ論で盛り上がっている。
君達。蜘蛛男の話はどうなったんだ。

「平安時代までは、きっと権力者は治世に能力をいいように使ってたんじゃないかな」
「で、それは悪い事じゃないけどいい事でもないし、ゴーストも生まれちゃうから…」
「そう、世界結界を作る事にしたんだ。」
「でも…反対する人はいるでしょう?」
「だからこそ、武家政権が必要だったんだ。武力で反対の声を押さえつけるために」
「そうなんだ…。すごいんだね、鎌倉幕府って。」

すっかりその気になってしまった二人はそれからひとしきり、その話で盛り上がった。

「あ、私はそろそろ帰らないと…。」
「もうこんな時間か。フレアもこの寮に入ればいいのに。」
「えぇ。近いうちに、とは思っているんですけど、お父さんが…。」

困ったように笑うフレアを玄関まで見送ったあと、その後ろ姿が見えなくなったのを確かめて、小さくため息をついた。

家庭事情ってのは、どこの家も色々と大変なんだろうね。
posted by 紅月 光也 at 00:01| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ、あはは… こ、こんなに喋ってたかな…?(照/真っ赤)
でも、楽しかったね♪(微笑)

…変なお話になっちゃったけど…(苦笑)
Posted by フレア at 2007年02月22日 00:43
コウイウ テンカイ オレ ダイスキ
歴史の裏話とかいいですよねー、ロマンです。
Posted by 鳳凰堂の中の人 at 2007年02月23日 09:18
歴史、浅葱も好きですね…。
光也さんとフレアさんは詳しいですね…。
凄くためになりました…。
Posted by 浅葱 at 2007年02月23日 15:37
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